相続を原因とする登記においては、所有権の一部を移転する登記はすることができないのが原則です(昭和30.10.15民甲 2216号)。
被相続人と相続人の共有状態が認められないからです。
例えば、被相続人がAで相続人がBとCの場合、Bのみが自分の相続分のみ移転する一部移転登記はできません。
ただし、これには例外があります。
被相続人Aが敷地権化されていない区分建物(201号室)と敷地である土地の持分(100分の1)を取得し、さらに別の部屋(301号室)と敷地である土地の持分(100分の1)を取得していた場合などです。
この場合、Aは土地の持分100分の2を所有していることになりますが、100分の2を一括で相続登記してしまうと、201号室の土地持分と301号室の土地持分の登記識別情報がまとめて1通となってしまい、将来、売却する場合などに不都合が生じてしまいます。
そのような不都合を回避するために、相続登記であっても一部移転登記ができるとされています。
登記の目的としては、一件目は、A持分一部(順位何番で登記した持分)移転とし、二件目は、A持分全部移転、となります。
さらに、土地が複数あって、それぞれの土地の持分の順位番号が異なる場合は、一件目の登記の目的は、A持分一部(順位後記番で登記した持分)移転とし、それぞれの不動産の表示の下に(順位番号 何番)と記載します。
二件目は、A持分全部移転、となります。
二件目は、A持分全部移転、となります。
このように、相続登記であっても、所有権の一部移転登記ができる場合があります。