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代襲相続の場合の法定相続分

代襲相続の場合の、法定相続分はどのようになるのでしょうか?

例えば、Aには子であるB・Cがおり、Cには子であるD・Eがいましたが、Cが平成25年1月1日に死亡し、Aが平成27年1月1日に死亡した場合で被相続人Aの法定相続分について考えてみます。

Aの相続人はB及び代襲相続によりD・Eの3名となります。
この場合、BDEそれぞれの相続分は3分の1ずつになるのでしょうか?

正解は、Bが2分の1、DEがそれぞれ4分の1ずつとなります(民法901条)。

代襲相続の場合、相続人が受けるべきであった相続分を代襲相続人が相続するからです。
例の場合、Cが受けるべきであった相続分は2分の1であり、その2分の1をDEが相続することになります。
そして、DEは同順位の相続人であるから2分の1を均等に分けた4分の1をそれぞれ相続することになります。

不在籍証明書と不在住証明書

相続登記を申請する場合、住民票の除票または戸籍の附票を提出しなければなりません。

なぜこれらの書類が必要かというと、戸籍謄本に記載されている被相続人が登記簿に記載されている所有権登記名義人と同一人であることを証明するためです。

すなわち、戸籍謄本には被相続人の本籍・氏名が記載されているのみで住所の記載がないので、戸籍謄本だけでは戸籍謄本記載の被相続人が登記名義人と同一人であることを証明できないからです(登記簿には名義人の住所・氏名のみが記載されており、本籍は記載されていない。氏名が一致するだけでは同一人とは証明できない。)。

これに対し、住民票の除票と戸籍の附票には、本籍・住所・氏名が記載されています。
そこで、これらの書類を提出することで、これらの書類が媒介となり登記名義人と戸籍謄本の被相続人をつなげることができ、それらが同一人であることを証明することができるようになるのです。

しかし、住民票の除票と戸籍の附票の保存期間は5年であり、死亡後5年を経過すると廃棄されてしまいます。(なお、これらの保存期間を戸籍と同じ150年にしようとする動きがあるようです。)
相続開始後、5年経過後に相続登記をしようとすると保存期間経過で廃棄されていることから、住民票の除票や戸籍の附票が取得できないことがあります。

この場合、住民票の除票と戸籍の附票の代わりに、不動産の権利証(登記済証)を提出することが一般的です。(法務局によって取り扱いが異なります。)
しかし、権利証を紛失しており、これを提出することができないこともあるかと思います。
その場合には、不在籍証明書・不在住証明書、上申書などを提出することを求められることが多いです。

不在籍証明書とは、申請した本籍・氏名と一致する戸籍、除籍、改製原戸籍が存在しないことを証明するものです。
不在住証明書とは、申請した住所・氏名と一致する住民票,住民票除票が存在しないことを証明するものです。

不在籍証明書を申請するときに記入する本籍は、登記簿に記載されている住所を記載します。
不在住証明書を申請するときに記入する住所は、登記簿に記載されている住所を記載します。

これによって、登記簿に記載された住所・氏名の人物は戸籍上及び住民票上、存在しないことが証明できます。

登記名義人と戸籍謄本の被相続人が同一人であることを100%証明することはできませんが、同一人である蓋然性が高いため、権利証、不在籍証明書・不在住証明書などの書類を提出することで相続登記を受け付ける取り扱いがなされています。

数次相続と相続放棄

Aには子Bがおり、Bにはその子Cがいたとします。

(1)
Aが平成30年1月1日に死亡し、Bが平成30年3月1日に死亡したとします。
Aには多額の借金があり、CとしてはAについては相続放棄をし、Bについては相続したいと考えたとします。

Cは、Aの相続について相続放棄することはできるのでしょうか。

これは可能です。
以下、説明します。

まず、この手続がどのようなものであるかを説明すると、「BがAの相続について相続放棄するという手続」をBの立場でCが行うという手続となります。

そして、CがBの相続を承認する場合は、CはBの相続人となり、Bの立場で行動することができます。

CはBの立場で行動できるので、BがAについての相続を放棄する手続をCは行うことができます。

よって、CはAの相続を放棄することが可能となります。

BはAを相続しないのでAの債務についてもBは相続せず、結果として、Aの債務をCは免れることができます。

(2)
Aが平成30年1月1日に死亡し、Bが3ヶ月以内に相続放棄したとします。
この場合、CはAの代襲相続人となるのでしょうか。

この点、CはAの代襲相続人とはなりません。
相続放棄は代襲相続原因とはならないからです。(民法887条)

BのほかにAの子がいなければ、次順位者(Aの直系尊属、これがいなければAの兄弟姉妹)がAの相続人となります。



cf.
それでは、Cが、Bの相続について相続放棄した場合、どうなるのでしょうか。
Aが平成30年1月1日に死亡し、Bが平成30年3月1日に死亡した場合について)

CがBについて相続放棄することによってCは初めからBの相続人ではなくなります。
BからCへの相続関係が無くなっている以上、AからCへの関係も無くなります。
Cの立場から、Aの相続についてとやかく言う必要はないし、言うことはできないということになります。

代襲相続と相続放棄

Aには子Bがおり、Bにはその子Cがいたとします。

①Bが死亡し、Bに借金があったため、CがBについて相続放棄しました。
②その後、Aが死亡したとします。

この場合、CはAの代襲相続人となるのでしょうか。

この点、CはAの代襲相続人となります。

(平成17年3月15日山形地裁判決)
「子は、被代襲者である親の相続を放棄した場合であっても、被代襲者の子で、被相続人の直系卑属で、かつ被相続人の相続開始時に存在するとの三つの要件を満たせば、相続放棄された親を代襲して祖父母の相続人となることができると解すべきである。」

よって、Aに多額の借金があってこれを負いたくない場合は、CはAについても相続放棄しなければなりません。


cf.
BがAについて相続放棄していた場合には、相続放棄が代襲相続原因にならない(民法887条)ので、Cは代襲相続人にはならない。
(Aが先に死亡している場合の問題)

死亡の順序や誰が相続放棄をするかによって結論が変わるので注意が必要です。

一人遺産分割協議による相続登記

Aには、妻B及び子Cがおり、A所有名義の土地(甲土地)があったとします。

Aが平成25年1月1日に死亡し、Bが平成27年1月1日に死亡した場合、Aの遺産をCが相続するという内容の遺産分割決定書を添付して、甲土地をAからCへ直接、相続による所有権移転登記をすることはできるのでしょうか。

これはできないとされています。

Aが死亡することによって、Aの遺産はB及びCの共有となり、さらにBの死亡によってBが相続していた分のAの遺産をCが取得したことになるからです。
すなわち、Cは、①Aの相続及び②Bの相続という2つの原因によって甲土地の全てを取得するのであり、Aの相続により直接甲土地全部を取得することにはならないからです。

これについて、東京高裁の判決がでております。

「被相続人Aの相続人がB及びCの2人であり,被相続人Aの死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のままBが死亡し,Bの死亡に伴う第2次相続における相続人がCのみである場合において,Cが被相続人Aの遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人Aの遺産は,第1次相続の開始時において,C及びBに遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てがCに帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によってCが被相続人Aの遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。」
(平成26年9月30日東京高裁判決)

よって、甲土地をC単独名義にするには、

①A→B・Cへの法定相続による所有権移転登記(登記原因 平成25年1月1日相続)
②B→Cへの法定相続によるB持分全部移転登記(登記原因 平成27年1月1日相続)

の2つの相続登記を申請しなければなりません。


cf.
Bが死亡する前に、B及びCの遺産分割協議が成立していた場合は、Cが作成した遺産分割協議証明書(Cの印鑑証明書付き)を添付してAから直接C名義に相続による所有権移転登記をすることができます。
(平成28年3月2日民二第154号)


遺産分割協議証明書

平成25年1月1日〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号Aの死亡によって開始した相続における共同相続人B及びCが平成26年1月1日に行った遺産分割協議の結果、〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号Cが被相続人の遺産に属する後記物件を単独取得したことを証明する。

平成28年1月1日

〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号
Aの相続人兼Aの相続人Bの相続人
C         ㊞

不動産の表示  (略)
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