贈与と相続

相続と贈与の違いについて

相続とは、ある人の死亡によってその人の財産などを特定の人に承継させることをいいます。

贈与とは、ある人(贈与者)が特定の人(受贈者)に対して無償で財産を与えることを目的とする契約です。

相続も贈与も財産が誰かに移転する点では似ていますが、大きな違いとしては、相続は死亡によって発生する点、贈与は当事者間の契約である点が挙げられます。
すなわち、相続は相続人の承諾なしに発生するのに対し、贈与は契約なので相手方の承諾がなければ効力はないのです。
(もっとも、相続についても、家庭裁判所に相続放棄の申述をすれば相続しないで済みます。)

ほかには、相続は死亡した人の債務も含めた財産全てが当然に移転するのに対し、贈与では、贈与者がどの財産を与えるのかを決めて受贈者に移転させるという点でも違いがあります。

また、書面によらない贈与は、当事者が自由に撤回することもできます(民法550条)。
あげると言ったけどやっぱりやめた、ということも許されるのです。
ただし、書面に贈与をすると書いていた場合や、すでに贈与の物を相手に渡していた場合は撤回できません。
これに対し、相続は死亡によって当然に発生するので、撤回ということは問題にはなりません。 

不動産を贈与した場合の手続について

土地や建物といった不動産を贈与した場合、名義の変更をする必要があります。
不動産の名義を変更するとは、法務局へ不動産の登記申請をするということです。
この登記をしなければ、自分が不動産の所有者であることを第三者に主張することができません。
そのため、不動産を贈与した場合は必ず登記をするようにしましょう。


不動産の登記申請する場合に必要となる書類は以下の通りです。

1.
贈与者(あげた人)の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)および実印

2.
権利証(贈与者が持っています。)

3.
受贈者(もらった人)の住民票

4.
固定資産税評価証明書(都税事務所や市役所で取得します。)

5.
その他に、登記原因証明情報、委任状(司法書士に依頼する場合)が必要となります。
登記原因証明情報は司法書士に依頼する場合、司法書士が作成するのでお客様がご用意する必要はございません。


(登録免許税について)
不動産登記を申請する場合、登録免許税を納める必要があります。
通常は収入印紙を購入して登記申請書に貼って納めることになります。

贈与の登記を申請する場合の登録免許税は不動産の評価額の1000分の20です。
(不動産の評価額は固定資産税評価証明書に記載されています。)
例えば、不動産の評価額500万円の土地を贈与した場合
500万円×1000分の20=10万円 の登録免許税がかかります。

贈与による不動産の名義変更登記の司法書士報酬は55,000円(税込)頂いております。

上記の例の場合、贈与による不動産の名義変更登記の費用は全部で16万円前後になります。

相続税と贈与税

相続が発生した場合には相続税、贈与をした場合には贈与税がかかります。

相続税は相続人にかかり、贈与税は受贈者(もらった人)にかかります。
 
相続税と贈与税は基礎控除額に違いがあります。 
基礎控除額とは、その額以下であれば税金がかからない額をいいます。

相続税の基礎控除額は、3000万円 +(法定相続人の数×600万円)です。
例えば、法定相続人が2人の場合は4200万円が基礎控除額となり、相続財産の価格が4200万円以下であれば、相続税はかかりません。

これに対し、贈与税の基礎控除額は1年につき110万円です(暦年課税)。
例えば、1年の間に200万円贈与を受けたのであれば、90万円について贈与税がかかります。

1年につき110万円というのは贈与を受けた人ごとにかかります。

すなわち、複数の人から贈与を受けた場合でも基礎控除額は110万円となります。
子Aが、父Bから100万円の贈与を受け、母Cから100万円の贈与を受けた場合、200万円贈与を受けたことになるので、90万円について贈与税がかかります。

税金についての詳細は、税理士や税務署にご確認いただければと思います。

相続時精算課税制度について

上記のように、贈与税は、相続税よりも基礎控除額が低く、税金がかかりやすくなっているので、贈与はしないで相続まで待つということになってしまいそうです。

しかし、相続時に相続人間で争いが起こる前に生前に贈与しておいて未然に紛争を防止したいという要望や、早いうちに子供に財産を贈与しておきたいという要望もあり得ます。

そこで、一定の要件の下で、2500万円までは贈与税がかからないという相続時精算課税制度が設けられました。

・相続時精算課税と認められるには、60歳以上の父母又は祖父母から、その子や孫(代襲相続人)である推定相続人又は孫への贈与であることが必要です。

・相続時精算課税制度は贈与する人ごとに使うことができます。
例えば、父については相続時精算課税、母については上記の1年ごとの110万円の基礎控除(暦年課税)とすることも可能です。

・相続時精算課税制度を利用する場合、暦年課税を使うことができなくなります。
すなわち、父からの贈与については相続時精算課税とする場合には、父からの贈与について110万円の基礎控除はできなくなります。

・相続時精算課税制度を選択する場合には、税務署への申告が必要です。
贈与をした年には金額にかかわらず申告する必要があります。

・相続時精算課税の場合は、相続が発生したときに精算します。
①贈与者が亡くなって相続が発生したとき、相続時精算課税のもとで贈与した財産を、贈与者の相続財産に加算して計算した相続税額
②既に支払っていた贈与税額(贈与額が2500万円を超えた場合)

①から②を差し引いてでた額が相続時の納税額となります。
②の額のほうが大きい場合は、差額が還付されます。

このように、相続時精算課税制度は、これを使ったとしても相続税に相当する額は支払わなければならないため、減税のための制度ではなく、贈与者(親など)が生きている間に財産を受贈者(子など)に移転するための制度であるといえます。

税金については詳しくは、税理士や税務署にご確認ください。
ページの先頭へ